「源泉かけ流し」という言葉は、浴槽に常に新しい温泉水を注ぎ続け、溢れ出たお湯を循環させずに自然に流れ出す様子を表しています。これは温泉の成分を最大限に保つため、循環やろ過といった人工的な処理を行わず、湧き出たままの温泉水をそのまま使用する方法です。そのため、この方式を実現するには、豊富な湧出量が求められます。

「源泉かけ流し」という表現は、単に「かけ流し」と言うよりも、より自然に近いイメージを強調するために使われることが多いです。そのため、温泉水に水を足す「加水」は原則として行われません。ただし、温泉の温度調整が難しい場合には、成分の変化が少ない範囲で加水や加温が許可されることもあります。

熱すぎる源泉を冷ます方法の一つとして、「熱交換方式」が利用されることがあります。この方法では、川などから汲み上げた冷水を利用し、その冷水に熱い源泉が通るパイプを通して源泉を冷却します。この方法の優れた点は、加水と異なり、源泉に直接水を加えるわけではないため、源泉の成分を薄めることなく温度を調整できるという点です。これにより、源泉の純粋な成分を保ちながら、適切な温度でお客様に提供することが可能になります。

実は、「源泉かけ流し」についての明確な定義は温泉法では定められておらず、施設や地域によってその捉え方が異なることがあります。たとえば、ある地域や温泉施設では「源泉かけ流し」の定義が曖昧で、「循環ろ過を使用していない」「加水・加温・消毒を行っていない」といった条件が設けられていることもあります。しかし、こうした条件が完全に統一されているわけではありません。そのため、「源泉かけ流し」と謳っていても、温度調整のために加水や加温を行っている施設もあるのが現状です。